3章

AM 9:58・・・
二人とも機体はほとんど初期のままだった。ジャンクは左のブレードをムーンライトに
換え、ゼンは肩武器を高出力レールガンらしきものを装備していた。2脚にキャノン?
と疑問を持っていたジャンクだったが、ただバカだなと思っただけだった。
やがて本部からミッション内容が送信されてきた。
「今回のミッションは非常に単純だ。この研究所の奥に暴走したMTが
いる。破壊してもらってかまわない。全て排除してくれ。」
あいかわらず抑揚のない声だった。
「じゃあやるか・・・そういえば・・・おいゼンとか言うやつ!」
「俺と同じスコアなんてやるじゃねえか。どうやって勝ったんだ?」
ゼンはなにもいわず対ACテストの戦闘データを送ってきた。
「まったく・・・無口なやつだな・・・それはそうと、ミッションいきますか!!」
ジャンクは
ゲートを開けた・・・

RS本部
「こんなことしてもいいんですか!?」
ポタはこんなこと初めてだった。
「いくら受験で好成績を出したからといって、こんな難しいミッションを
やらせるなんて・・・あなたの気が知れません!」
ポタはゼルフに叫んだ。
「大丈夫だ。あの二人なら。それにもう契約してしまったのだから仕方ない。」
ポタはなにも言わず部屋から出て行った。
ゼルフはもう一度契約書に目を通した。
 
  ミッションレベル        B
  場所             ニング研究所
  敵勢力            強化大型MT 
  詳細           わが社の新型MTが暴走した。
                早急に撃破してほしい。
                このMTは危険だ。
                くれぐれも注意して欲しい。

「ミッションレベルBか・・・ちと難しすぎたか・・・」

「おい!なにもないぞ!」
ジャンクはゼンに言った。
そこは天井がやけに高い巨大な円形の部屋だった。
ところどころ焼け焦げた跡がある。
「上だ!!」
とつぜんゼンが叫んだ。
そこにはACの2倍はある体積を持った球体MTがいた。
「でけぇ・・・」
そういっている間に敵は攻撃をしてきた。
「グレネードか!?」
球体からところどころ砲口が見えている。打ってきたのは紛れもなく
グレネードだ。
ジャンクはライフルを4,5発打ち込んだ。
「ぜんぜん効いてねぇじゃんか!」
「ここはムーンライトで行くしか・・・ぐっ」
ジャンクはグレネードを被弾した。
「畜生!おりゃ!」
幸い敵MTは動きが遅くムーンライトの空中切りをもろに食らった。
「どうだ!」
しかしまだ敵MTは正常に動作していた。

RS本部では、ゼルフとジラー少佐が話し合っていた。
「なぜあんな新米にレベルBをやらせたのだ?いくらシンの孫とはいえ・・・」
「あの二人の強さにほれているからですよ」
「笑い事じゃないぞ。あいつらは99%あのミッションをクリアすることはできん!」
「そうですか。私はクリアできるとおもいますがね。」
「なぜだ?」
「あの二人はすでに『超化』を会得してますから。」
「まさか!ありえんだろう!」
「なんなら見ますか?やつらの対ACテストのデータを。」
とゼルフはいい、ジラーにデータを再生してみせた。
「そんなバカな・・・」
あきらかにジラーは衝撃を受けていた。
「これならもしかしたら・・・」

ジャンクとゼンは確かにダメージを与えてはいたが、自分たちの方が
ダメージを受けていた。
ジャンクは自分の残りAPを見た・・・
自機残りAP  2038
「やべぇ、いきなりやられちまうのかよ・・・」
「畜生、負けねぇぞ・・・絶対・・・」
ジャンクの目の色が変わった。
ジャンクACは初期機体とは思えないスピードで敵MTに突撃した。
そしてムーンライトの斬撃を2回食らわせる。3回目を当てようしたときに、
敵MTのグレネードがジャンクACに直撃した。ジャンクACは爆風によって
吹き飛ばされた。次食らったら終わりだということが朦朧とした意識の中をよぎった。
ふいにゼンがいないことに気付いた。
ゼンは敵MTの頭上の方にいた。敵MTは3本のグレネードの砲口を
こちらに向けている。
「もう・・・だめだ」
負けを悟ったジャンクの耳にレールガンの集束音が聞こえた・・・
集束されたエネルギー弾が、敵MTの装甲を貫いた。
MTは動かなくなった。
「勝っ・・たのか?」

「あぶなかったな。でもやるな・・・『超化』ができるとは。」
「なん・・・なんだ。『超化』って?」
「貴様がムーンライトを食らわせるときになっただろ。」
「あの意識がなんというか・・・朦朧として・・・変になるやつのことか?」
「そうだ。知らなかったのか?」
「ああ、で『超化』って・・・なんなんだ?」
「まぁ簡単に言うと一定の時間だけ自分の意思とACとがうまく噛み合って、
 ACの運動能力や射撃精度などが飛躍的に上がることだ。
 熟練したレイヴンや生まれつき才能を持ったレイヴンはできるらしい。」
「じゃあ、お前が・・・空中でレールガンを撃ったのも・・・」
「そう。『超化』のおかげだ。」
「それな・・ら、はじめから『超化』すりゃよかったじゃねぇか!」
「『超化』はいつでもできるわけではない。熟練したレイヴンでさえ『超化』を操れる
 やつはほとんどいない。」
「てかお前・・・いつのまにかおしゃべりになってないか?」
フンといいながらゼンはゲートを開けた。
「こちらゼン、ミッション成功だ。今から帰還する。」
と本部に送信した。
「早く帰還するぞ。」
とゼンは言った。
「へいへい!」
「こちらジャンク、ミッションは成功した。帰還する。」
そして、2機のACはニング研究所から去っていった。