8章
「くっ・・・まだか」
ジャンクは毒づいた。
さきほどのAC3体を抜けてから、3分程度経過していた。
まるでそこは迷路のようだった。が敵の姿はまったくない。
「ゼン・・・・」
ゼンはもう生き残れないだろう。ランカーAC3体を前に勝てる人間など・・・まずいない。
ついにゲートが現れた。今まで見てきたゲートとは違い、巨大で、なにか強いオーラが
感じられる。
「ゼンのためにもっ!!」
巨大な部屋だ。まるでアリーナのよう・・・
しかし何かの建物がいくつか建っている。ビル級の大きさだ。
「来ないと思っていたが、来たか・・・」
奥にやつがいた。
最強の鴉、クリエイター。
今、自分はあいつに一人で挑もうとしている。
そう思うと背筋が寒くなった。
よく見ると「普通」のACではなかった。
何かが背中についている。バックパックのような羽のような・・・
「驚いたか?旧世代のACのコピーに。いやACではない、これはACを超えている。」
武器が違う、軽量系の脚部に大型の銃、そしてブレード。
背中のブーストが発動する。
そのまま上昇・・・
止まった。
「驚いて声も出ないか。まぁよいすぐに終わらせてやる。」
クリエイターは銃を構えた。エネルギーが集束されていく・・・
レールガンか?
ジャンクは機体を傾け、ビルに身を隠す。今さっきいた場所に白い光線が
高速で駆け抜けていた。
「思ったより早い、チャージからのショットだな・・・うっ。」
レーダーのど真ん中に青い点が無数に出現した。
ミサイルだ。
「ミサイルかっ。」
左にフェイントをかけ右にブースト。避けられる。
「逃げているだけか?」
隠れていたビルから赤い閃光が飛び出してきた。
あやうく自機に当たりそうだったが、目の前で止まった。
赤い閃光はそのまま右にずれていく。
ビルが真っ二つになった。
赤い閃光は今目を合わせたACのブレードだった。
「来るっ!!」
間一髪相手のグレネードを避ける・・・グレネード?
「装備の数に驚いているのか?」
今度は上空に現れた。
「来たっ」
ENマシンガンを上空の敵にお見舞いする。
自機の前に着地したところにブレードを喰らわせ・・・
ヴァジッッッッジジジ
二つの刀身が重なる。
赤と青。対比的な色が交錯する。
その瞬間は長く感じられた。
力で負けたジャンクはそのまま吹き飛ばされる。
容赦なくレールガンを打たれる。
「くっ。」
2発被弾、それでも相当なダメージだ。
自分のACの左腕がない・・・自機のはるか後方に吹き飛ばされていた。
「このACは特殊でな。これとこの奥にある大型兵器を作動すれば
この世界など、企業など、すべて粉々だ!」
相手は攻撃をやめない。
だが避けに専念すれば避けられる。今の俺なら・・・
「お前の目的はっ・・・」
「そう、企業とこの世界の撲滅だ。」
なぜだ?企業がなくなったらお前もレイヴンとして活動できなくなるではないか?
なのになぜ?
「もらった!」
一瞬の隙も見逃されなかった。
ビルの横から出現したクリエイターのレールガンの銃口は
まっすぐジャンクに向けられていた。
「終りだ・・・」
集束音がする・・・
俺は負けたのか!?
奇跡が起これば・・・
そのときジャンクの目の前でレールガンから飛び出したエネルギーの塊がはじけた。
そのままジャンクは敵に突進した。ひるんでいる敵ACの頭部とコアにENマシンガンと
グレネードを乱射した。
敵ACは墜ちた。
「勝った・・・」
そんなことはない。エネルギーの塊はまっすぐジャンクの機体に直撃した。
奇跡なんてものはこんなときには起こりっこない。
後ろの壁まで吹き飛ばされた。
もうジャンクのACは・・・脚部がない。
「まだまだ、だったな。」
クリエイターはそういいながら背を向け、奥の大型兵器の元へ向おうとしていた。
ふいにジャンクはまだ武器が使えることを思い出した。
やられたのは足だけじゃないか・・・
「まっっっっっだだぁ!!!」
残りの全ての武器の弾を全て打ち込んだ。
全弾命中・・・だが墜ちない。
背中のコアの装甲が剥がれ、ジェネレーターがむき出しになっている。
あともう少し弾が残っていれば・・・
「貴様、よくも・・・」
ゆっくりクリエイターは接近してきた。
やられる・・・
左手から赤い閃光を出す。
それをまっすぐこちらへ・・・・
「ぐぅぅぅああぁあ」
コックピットまで到達した・・・
あまりの高熱によって金属が溶け、それがジャンク自身の左腕にふりかぶさった。
次の一撃で確実に死ぬ。目の前でレールガンを構えている。
「死ねぇぇぇ!!」
完全にクリエイターはキレていた。
もう左手の痛みも感じない、もう動かない・・・
目の前に白い閃光が立ち込める・・・
でも「白」ではない・・・・・
「青白」い・・・・
「ぐぅぅぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
目の前でクリエイターが何かに貫かれていた・・・
そして爆発した。
何がなんだかわからないまま、意識が朦朧としてきた。
そしてそのまま意識を失った・・・・
薄れていく意識の中でみたもの
最大のライバルであり、友であった。
ゼンの姿が
そこにはあったように思えた。